犬はストレスが積み重なると、自分の尻尾を追いかけ回して噛んでしまったり、自分の体の一部をなめ続けてなめ壊したり、毛を引き抜いてしまうという自傷行為が見受けられることがあります。
これらは追いかける、舐めるといった、同じ行動を無目的に繰り返す「常同行動」が原因となっています。
ストレスのタイプは様々で、環境の変化や不適切なしつけが原因となることもあれば、退屈であることも犬にとって大きなストレスの一因となります。
しっぽを追い回したり手をなめ続けるような常同行動は、ワンちゃんの心の叫び?
私の愛犬は2歳の雑種なのですが、数ヶ月前から不思議な行動をとるようになりました。突然、尻尾を追いかけ回すんです。疲れるまでずっとです。
一体なんでこんなことをしてしまうのか不思議ですし、いつか尻尾を引きちぎったり、大怪我しないかと不安で仕方ないです。何かの病気なのでしょうか?
端的に言うと、心の病気の可能性があります。
常同行動とは?(読み方:じょうどうこうどう)
常同行動とは”異常な頻度で同じ行動を反復的かつ持続的に繰り返す”こと。
そして、常同障害とは”上記の行動により、飼い主と動物の生活に支障をきたす”ことをいいます。
簡単に言うと、”ずっと意味がなさそうな同じ行動を繰り返してしまうこと”です。
高齢の場合は認知障害の一部で常同行動を起こしてしまうので区別がつきづらいですが、比較的若齢で発症する場合は認知障害とは別の原因を考慮する必要があります。
ヒトの強迫性障害(戸締りなどを何度も確認せずにはいられないなど、同じ確認をくりかえしてしまうこと。)と類似の疾患と考えられていますが、動物の精神疾患はまだまだ分からないことが多いです。
犬の常同行動の症状
- 同じ場所をずっと行ったり来たりする。円を描くように回り続ける。
- 自分の尻尾を追いかけ続ける。
- 何もない空中を噛もうとする。
- 体の一部や床などの同時部分を執拗に舐める。
など
何か心当たりはありますか?
犬にとってのストレスってどんなものがあるんですか?
何もすることがなくて暇すぎる、”欲求不満”というのもストレスになります。
例えば、動物園にいる動物たちの中で、檻の前をずーーーっと行ったり来たりしていることがありますよね?あれも常同行動の一つです。
犬の常同行動の治療
常同行動の治療について説明します。
1.環境の改善
ストレスの原因と思われることを無くす。
他の動物がストレスなら、接触しないように工夫するか、または慣れさせるためのしつけ(脱感作療法)を行います。
飼い主との絆の構築
常同行動に対して怒ることはストレスを増強させ、行動を悪化させてしまうことがあるので絶対にしてはいけません。絆の構築には、しほ先生が推奨するホールドスチルなどが有効です。(ホールドスチルについてはこちら)
適正飼育
①散歩が短いなら散歩の時間を延ばす。
②遊ぶことが足りないなら、遊ぶ時間をしっかり設ける。
③おやつなどをあげるときに”おやつを探しながら食べる”といった、アクティビティのあるおもちゃを用意する。
④住環境の整備。(十分なおもちゃを準備したり、隠れられる場所を作ったり。猫であれば高いところに登れるようにする、窓の近くに座れるスペースを作る、など。)
2.薬物療法
常同障害、強迫障害は脳の中の神経伝達物質である、ドーパミンとセロトニンが関係しているとされおり、これらに対する薬の投薬が検討されます。
ただ、動物の常同障害についてはまだわかっていない部分も多く、全ての病院で治療が受けられるわけではありません。
ワンちゃんが生活の中でストレスを感じなくなるためのしつけや、遊び方のアイデアなどはしほ先生にアドバイスをもらうといいと思います。
終わりに ストレスから愛犬を守る為のしつけの重要性
そうですね。まだまだ分からないことだらけですが、一つ言えるのは「動物もストレスを感じるし、それが病気につながる」ということですね。
特に、犬では社会的成熟期とされる1〜3歳頃にこの常同障害を発症しやすいという研究があります。
これもワンちゃんたちを飽きさせないための、そして問題行動を起こさせないためのしつけ方法の一つなのだな、と思いました。
しほ先生、ぜひ生徒さんたちにこういったしつけのコツを教えてあげてください!
【参考文献】
1、内田佳子「常同行動を呈した猫5頭の長期観察報告」J-STAGE,2010年(最終閲覧:2020年4月2日)https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/19/3/19_3_95/_pdf/-char/ja
2、荒田明香「犬における問題行動」J-STAGE,2017年(最終閲覧:2020年4月2日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/dobutsurinshoigaku/26/3/26_98/_pdf/-char/ja
3、塩入俊樹「強迫スペクトラム障害と不安障害」精神経誌,2011年(最終閲覧:2020年4月2日)
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1130101008.pdf