獣医師の記事

犬の鼻水の原因とは?病気か正常かを家庭で見分けるコツ(獣医師作成記事)

犬も人と同様、呼吸器疾患の多い動物です。犬の鼻水を見かけたら、まずはそれが病気によるものなのか、病気ではないのかを区別しないといけません。緊張時の鼻水、興奮時の鼻水、病気の鼻水…。鼻腔のガンや肺水腫など、放っておいてはいけない鼻水についても解説します。

犬の鼻水の原因とは

今日は「しつけトレーニング中に鼻水が出る」という相談者様がいらっしゃっています。とうの先生、よろしくお願いいたします。
はい、よろしくお願いいたします。
今回の相談者
今回の相談者
こんにちは。よろしくお願いいたします。うちの子は1歳のトイプードルです。イヌバーシティでしつけを頑張っているのですが、特に「ホールドスチル」というトレーニングをしたときに、鼻水がよく出ます。これは何かの病気のサインですか?

*ホールドスチル:犬を膝の上に乗せて仰向けにし、人に体を任せる(ボディーコントロール)ための練習方法。
→ホールドスチルの説明を詳しく見る場合はここをクリック

そうなのですね。鼻水はどんな色でしょうか?また、普段からよく出ていますか?それともホールドスチルの練習をしたときにのみ出ますか?
今回の相談者
今回の相談者
鼻水は透明で水っぽいものです。普段は鼻水は出ていなくて、ホールドスチルの時によく出ます。あ、あとは家に来客があったときなどに少し出ることがあります。その時の鼻水は割とすぐに止まるんですけど、その後も鼻周りをしょっちゅう舐めています。
なるほど。であれば、興奮や緊張が原因の鼻水の可能性が高いです。犬は緊張した時にも一時的に鼻水が出ることがあるんです。今回は病気ではないでしょうから、安心してください。鼻周りを舐めるのも、緊張したときなどに犬がする仕草の一つですよ。

犬の鼻水の種類と出る原因

漿液性(サラサラした透明の鼻汁)
緊張、興奮、アレルギー、口鼻瘻管(鼻と口に穴が開いた状態)、肺水腫など

化膿性(ドロッとした黄色や薄緑色のついた鼻汁)
ウイルス+細菌感染症、真菌感染症、肺炎、腫瘍、異物、ポリープ、鼻腔の創傷(ケガ)、口蓋裂、副鼻腔炎、口鼻瘻管など

粘液性(ネバつきのある鼻汁)
真菌感染症、腫瘍など

鼻出血
鼻腔の創傷(ケガ)、腫瘍、口鼻瘻管、肺水腫、血友病などの出血傾向、その他全身的な疾患に関わるものなど

*これらが複合的に起こる場合など、タイプの異なる鼻汁が出ることもあります。

専門用語もあって少しわかりづらいかもしれませんが、ごく簡単にまとめると、「犬は緊張したときにも病気じゃない鼻水を出すし、鼻水の状態によっては病気のサインにもなる。」ということです。
今回の相談者
今回の相談者
緊張しても鼻水が出るんですね!吠えたり、すごく怖がったりするほどではないですけど、来客の時も緊張しているんですね。そして、しつけでも緊張しているということですよね?しつけがうまく出来ていないということですか?
長期間、同じトレーニングをしていても緊張が解けないのは問題かもしれませんね。しかし、しつけトレーニングも慣れないうちは「何が起きるんだろう?」と犬が緊張してしまうことはよくあります。これは最初は仕方のないことです。しつけがしっかり身に付いてくると、飼い主さんのすることに絶対の信頼感が生まれますから、何をされても安心するようになってきますよ。そして「犬が安心する」ことがしつけの目標の一つでもあります。
今回の相談者
今回の相談者
なるほど。ホールドスチルのトレーニングは最近始めたばかりなので、まだ緊張しているということですね。愛犬の気持ちがわかった気がして安心しました。
良かったです。要注意な鼻水というのは、鼻水の量が多いこと、緊張時以外にも鼻水が出ること、色やネバつきのある鼻水が出ること、呼吸が早いこと、咳やくしゃみが多く出ること、です。こういった場合は病院で診てもらってください。
今回の相談者
今回の相談者
わかりました。今回は安心できましたが、違う状況で鼻水が出るような場合は注意して見るようにします!ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。しつけ、頑張ってくださいね!
とうの先生、ありがとうございました。確かに、しつけの最中に水っぱなやよだれが出てくることがありますよね。ホールドスチルは完成すると、膝の上で寝てしまう子もいるくらいですが、最初は緊張しても仕方がないです。「正しいトレーニング」を繰り返すことで、徐々に身について行きますよ。
相談者様のわんこも、早くリラックスできる段階までいけるといいですね。
そうですね。ところで病気の時の鼻水について、私の方からも質問させてください。「絶対に見逃してはいけない鼻水」はありますか?
とても重要な質問ですね。上に犬のいろいろなタイプの鼻水について書きましたが、端的に「これだけは見逃さないで!」という鼻水についてお話します。

犬の鼻水の絶対に注意してほしい症状

絶対に見逃してはいけない鼻水

黄色や緑色の鼻水
感染症、腫瘍、歯周病の悪化などで鼻に穴が開いている場合などが考えられます。

血混じりの鼻水
上と同じ原因や全身の病気、肺水腫といった緊急疾患の可能性があります。

咳が出ている時、呼吸が早い時
肺炎や肺水腫といった緊急性の高い疾患の可能性があります。

*犬の咳は場合によって、吐き気(吐きそうで吐かない、または少量の液が出るのみ)に見えることもあるので、注意が必要です。

上の3点に少しでも当てはまる場合はすぐに病院に行ってください。家で出た鼻水をティッシュにとって持って行ったり、家での呼吸の様子などを動画に撮ったりすることも診断の助けになります。
なるほど。確かに「家では調子が悪そうなのに、病院に行くと元気になる。」というお話を聞くことがあります。気を張っちゃうんでしょうかね。家での様子が分かると、先生も助かりそうですね。
そうですね。咳かどうかがわからない時も、動画を撮って見せてもらえると助かります。

終わりに 愛犬の為に早めの対処が大切

 

  • 犬は緊張や興奮をしたときに一次的に鼻水を出すことがある。
  • 色や粘り気のある鼻水、呼吸が早い時、咳が出ている時はすぐに病院で診てもらう。
鼻水ひとつでも奥深いです…。犬が人間の言葉をしゃべれない以上、人が犬のコミュニケーション方法と体のことについて学んで、犬のサインに気付いてあげないといけないですね。
その通りですね。そして、何か健康で不安に思うことがあれば、遠慮なく動物病院で聞いてほしいです。
そうですね。犬についての教育はドッグトレーナー、病気は獣医師が専門ですが、不安に思うことはドッグトレーナーにもぜひ相談してほしいです。とうの先生、ありがとうございました。
ありがとうございました。

犬は言葉で伝えられないので、飼い主さんが気にかけてあげる事が大切です。うちの愛犬は大丈夫かな?と思ったら、ぜひご相談ください。

いまなら、しほ先生をはじめとするプロのドッグトレーナーたちが2週間無料で直接相談に乗っています。

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参考文献

 

石田卓夫,伴侶動物の臨床病理学 第2版,緑書房,2014

 

Akiyoshi Konno, VASOMOTOR CONTROL IN THE NASAL MUCOSA OF THE DOG STUDIED BY THERMOCONDUCTIVITY MEASUREMENT METHOD,1976, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/79/4/79_4_439/_article/-char/ja

ABOUT ME
「世界を旅する獣医師」 唐野智美
山口大学獣医学科卒 卒業後、東日本大震災の被災動物保護シェルターを併設する一般動物病院にて診療業務に従事。シェルター閉鎖後は、世界各国の動物事情を体感するために単独で世界一周。帰国後、福岡の救急動物病院にて救急獣医療に従事し、緊急性の高い疾患の診療、手術を多く請け負う。同時期に、人と動物との共生について伝えるための「世界一周動物写真展」を全国5都市で開催した。先進的なシェルターを見学するためのオーストラリア滞在など、日本の動物福祉向上を目標として積極的に活動中。