犬の歯磨きは難しい。そういって諦めている方も多いと思いますが、効果的な歯磨きは基本のしつけを徹底することで解決します。
歯磨きの失敗の多くは「口を触られるのを嫌がる」事にあります。つまり、歯を磨くより前にクリアしておかないといけない「大切な事」があるのです!
歯磨きのための基本的なしつけと効果的な歯磨き方法を、ドッグトレーナーと獣医師が解説します。一緒に理想的な歯ブラシを目指しましょう。
犬の歯磨きの重要性
歯磨きはしつけも絡む、愛犬の大切な健康管理のひとつですよね。私も途中で説明に参加させていただきたいと思います。
まずは、とうの先生よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
うちには3歳のダックスフントがいます。犬の歯周病は若いうちから起きると聞いたので、歯磨きをちゃんとしたいと思っているのですが、口を触られるのを嫌がってうまくいきません。
今は1週間に1回、歯ブラシをあてている程度で、ちゃんと歯磨きできている気がしません…歯磨きガムもアレルギーがあるのであげていません。
どうやったらうまく歯磨きができるようになりますか?
確かに、お聞きする限りでは十分な歯周病対策はできていないようですが、歯周病への危機感を持っていることは大きな一歩です。犬の歯磨きは、飼い主さんが歯周病の怖さを理解することと、基本のしつけがとても重要です。
順を追って説明していきますね。
犬の歯周病の怖さ
犬は人間の4〜5倍のスピードで歯石が沈着し、3歳以上の70%が歯周病予備軍または歯周病と言われています。
さらに犬の歯周病は、肝臓、腎臓、心臓などの全身臓器に影響を及ぼすことが研究でわかっています。
詳しくは以前の記事に書いていますので、参考にしてください。
→愛犬の口臭の原因って!?放っておくと怖い犬の歯周病の話(獣医師作成記事)
ペット保険会社の調査によると、特にイタリアングレーハウンド、ダックスフント、ビションフリーゼ、トイプードル、パピヨン、ヨークシャーテリア、ミニチュアシュナウザー 、ポメラニアン、キャバリアKCスパニエルは、歯周病に特に注意が必要な犬種と言えます。
歯磨きを諦めてしまう理由
「歯周病は怖い」ということを飼い主様が分かっていても、犬がその怖さを分かってくれて自主的に歯磨きをしてくれるわけではありません。多くの飼い主様が歯磨きを挫折してしまいます。
その主な理由がこちら。
- じっとしてくれない。
- 口を触ると嫌がる。
- そもそも口を触らせてくれない。咬む。
- 歯ブラシを見せると逃げて捕まえられない。
口周りは犬にとって、身を守る(いざとなったら相手を攻撃する)ための重要な部分です。心から信頼する相手でないと、自由に触らせてくれるわけがないのです。この”心から信頼する”ことが、効果的な歯磨きのための重要ポイントになります。
嫌がっているところを無理やり力づくで押さえつけても、犬の気持ちは「嫌!!」なままです。嫌なことをされるのであれば、当然、抵抗します。それが上の行動で出てくるのです。この”抵抗”を減らす・無くすためには、基本のしつけを徹底しないといけないのです。
犬は信頼した相手には、身を任せることができます。信頼した相手がすることであれば、多少のことは我慢できるようになりますし、慣れてくれば嫌だとすら思わなくなってきます。まずは”身を任せられる”ような信頼関係を築くところから始めましょう。
でも頑張ります。歯磨きを諦めたままで歯周病になって、将来この子が苦しむのは絶対に嫌です!
しつけとの関連が大きなこの歯周病という病気も、根気強くやっていかないと防ぐことができないのです。
でも、具体的にはどうしたらいいのですか??
”口を触られることに慣れさせる。”これは動物病院でも一般的に教えられることだと思いますが、これがなかなかうまくいかずに諦めがちなのです。
どうやったら、口を触らせてもらえるのか?これは口を触る以前の問題なんです。
では、犬の歯磨きのためのステップを説明していきますね。
犬の歯磨きの効果的な方法
歯磨きトレーニングの方法
犬の歯磨きを紹介します。
- ボディーコントロールをできるようになる。
- マズルコントロールをできるようになる。
- 口の中を直接、指で触れるようになる。
- 歯磨きシートを巻いた指で口の中を触れるようになる。
- 動物用歯磨きペーストの味に徐々に慣れさせる。
- 歯ブラシに移行する。
多くの場合この①〜②の段階を行わず、飼い主に完璧に身を任せることに慣れていない状態で突然③または④から始めてしまうため、犬の方も「なんだなんだ!?」と不快に感じてしまうのです。
たとえ信頼している家族でも、突然口の中に指や変なものを突っ込まれたら、私だってビックリしますし、嫌な気分になります。
この①〜③のステップは「ホールドスチル」というしつけをマスターすることでクリアできます。ドッグトレーナーのしほ先生がこの技術について説明してくれている動画があるので、参考にしてください。
コツは「犬が暴れても慌てないこと。力は入れるが締め付けないこと。大人しくしていたら力を緩めること。」です。
しかし、歯に触られることを慣れさせるために、飼い主さんの手の感触がわかる歯磨きシートをまず使うことも有効なのです。
誤食する傾向のある犬はシートを奪われないように、しっかり指に巻きつけて注意しながら使ってください。
歯磨きシートが使えるようになったら、歯磨きペーストを少量ずつ足していって味に慣れさせます。⑤と⑥の順番は逆になっても構いませんが、ペーストの味に慣れてくると、同じ味のする歯ブラシへの移行もスムーズになるのでおすすめです。
歯周病がすでに重度の場合は病院での歯科処置を受ける必要があります。できるだけ早くステップ⑥をできるよう、毎日、根気強くがんばりましょう。
次に、ステップ⑥で気をつけないといけないことは「歯周病の原因を叩く」ことです。
理想的な歯ブラシのあて方
犬は人間のように歯の表面が壊されていく「むし歯(齲歯)」が問題になることはほとんどありません。
犬では、歯の根元が菌によって侵食されていく「歯肉炎・歯槽骨(葉を支える骨)の破壊・根尖膿瘍(歯根膿瘍、歯の根元に膿が貯まる頃)」が問題となります。このため、歯の表面だけでなく、歯周ポケットに溜まったプラーク(歯垢)をかき出すことを意識する必要があります。
具体的には、歯周ポケットに入れることを意識して、歯ブラシの毛先を歯の根元に対して斜めに当てることです。ブラシの先を歯と歯茎の間に押し当てて細かく前後左右に動かすことで、毛先が歯周ポケットに入って行き、歯垢をかき出します。
力を入れすぎると歯肉を傷めるので気をつけましょう。優しく、細かく、です。これは人の歯科において「バス法」と呼ばれるものですが、歯周病を起こしやすい犬においては効果的な方法と言えます。
人のようなむし歯ではなくて、犬は歯の根元が問題になるということを意識しないといけないですね!
軽度の歯肉炎であれば、効果的な歯ブラシで改善する可能性があるということが実感でき、飼い主さんの歯磨きトレーニングの励みにもなりました。
まずは口を触らせてくれるようになるよう、しほ先生のしつけをお手本に実践して行きます!
終わりに 犬の歯周病を予防して愛犬を病気から守る
- 犬の歯周病は全身の病気につながる。
- 歯周病予防のためには歯ブラシによる歯磨きが一番。
- 効果的な歯ブラシのためには、口元を触られることに慣れさせる。
- 口元を触らせてもらうには、基本のしつけを徹底し、体を任せられるくらいの信頼関係が必要。
でも、放っておくと犬の歯周病はかなりの確率で起こり、どんどん悪化します。ひどい場合は麻酔をかけて抜歯をしないといけません。そうならないためにも、基本のしつけからしっかりやっていくことが大切なのです。
ありがとうございました。
参考文献
アニコム、「家庭どうぶつ白書」、2018(最終閲覧日:2020/8/11)