犬がけたたましく吠えている時や、身構えて唸っている時などに、いくら「ダメ!イケナイ!」と大きな声を出しても、大抵の犬には声が届いていないですよね。
体罰はしたくないけど、一体どうやって叱ったらいいのやら・・・と困っていませんか?飼い主さんの声は重要視していない犬には、かわりに「音」を使うととても効果的なんです。
叱っても聞かない犬には音でしつけをしよう
犬の褒め方は分かっても、犬の叱り方が良くわからないという方、多いですね。人間相手なら言葉を使って「なぜ間違っているのかを説明」することが出来ますが、犬はそうも行きません。
吠える犬を座らせて、同じ目線でまっすぐ目を見つめて「吠えたらお客さんにご迷惑になっちゃうでしょ。吠えるのやめようね。」なんて言ってるそばから吠え始めたり、「あなたが吠えるとママ悲しい」なんて涙ながらに訴えたって、残念ながら通じませんよね・・・・?
そんな時には「犬がビックリするような音と望ましくない行動をペアにする」ことで、「ダメ」を効果的に教える事がが出来ます。
なぜ犬のしつけに音を使うのか
犬にとって、飼い主さんの声というのは日常の一部です。犬には会話の内容は分からないので、基本的には、敢えて話しかけられない限りは「無視してもいい」領域の音になっています。
犬にとっての飼い主さんの声って、そんな音ですから、「ダメ」「やめなさい」と重要な事を伝えたくても埋もれてしまうんですね。
特に、飼い主さんの声が普段から声の大きい場合や、理由もわからずしょっちゅう大声で叱られる犬などは、大きな声も重要視しなくなってしまいます。
また、怒っている飼い主さんに犬がさほど脅威を感じていない場合も、同じように飼い主さんの声=無視 という認識が犬の中で出来上がってしまいます。
声ではなく、音で叱るしつけ
犬が嫌いな音ってどんなものでしょうか? 下にリストしてみました。
【金属音】 ガシャン缶*・シンバルなどに代表されるような、甲高くて頭にひびく感じの音です。自然界に存在しない音なので本能的に「危険・怖い」と判断します。
【突然の大きな音】 銃声・花火・爆竹・雷・新聞紙で床を叩くなど
人間でもそうですが、やはり突然の大きな音にはビックリするものです。突然の銃声や爆竹のような音は飛び上がってしまいますね。犬も同じです。
【超音波音】
人間にはよく聞こえない音で、犬の耳にはとても高い音として聞こえるキーンという音です。
叱るしつけに使いやすい音はコレ
上記に挙げたように犬が嫌う音は色々ありますが、犬を叱るときに私が個人的に一番おすすめなのは、リストの一番最初の「ガシャン缶」です。
「ガシャン缶」とは、空き缶にコインを入れたもので、振ったり投げたりすると「ガッシャーン!」と大きな音がするものです。 安価で手作りできて、家の色々な場所にいくつも置いておいて、咄嗟の状況でも使いやすいというメリットがあります。
良い音がする「ガシャン缶」の作り方
まずは、下記の3つのアイテムを準備してください。
アルミ缶だとあまりいい音がしないので、ステンレスなどのもっと厚みのある金属缶が良いですね。私が一番重宝しているのは、100円ショップで売っているステンレス製のソルトシェイカーです。小さな穴が沢山開いているので、中の音が効果的に外に漏れ、良い音がします
1円玉だと軽すぎるので、10円玉の方が良いでしょう。お金を入れるのに抵抗がある方は、バラバラと小さなもので金属製なら何でもOK。
ガシャン缶を投げて使う事もありますので、中に入れたものが飛び出さないようにしっかりと止められるテープが良いです。
作り方は超簡単。缶の中にコインを入れ、テープでしっかり閉じる。ガシャガシャと振ってみて、大きくていい金属音がすれば完成!簡単でしょう? これを、犬が過ごす部屋の数だけ分作ってくださいね。
ガシャン缶の音の使い方
さて、ここからが肝心の使い方講座です。
犬が望ましくない行動をしたら、即座に「ガシャン!」と音を鳴らし、犬をびっくりさせる。
音を鳴らす人は誰れでもOKですが、以下の点について注意をしてください。
音を鳴らすタイミングに注意
犬が望ましくない行動をしたその「瞬間」にガシャン!と音がなると、「何が悪かったのか」が犬にとって一番分かりやすいです。 望ましくない行動が無駄吠えでであれば、「吠えた瞬間」です。
しばらく吠えた後にガシャンと音を鳴らして黙らせても、それは「黙る」の訓練であり、「吠えない」しつけにはなりません。犬が吠えたらすぐに対応できるよう、犬が出入りする部屋の全てに1つずつ置いておきましょう。
「悪い行動」=「ガシャン音」の一貫性
ほとんどの犬は1回では「ガシャン!」音の理由を理解できません。一瞬だけ吠えやんで、「あー、ビックリしたァ、もうやめてよね、ワンワンワンワン!」ってな感じです(笑)。
上記のように、またすぐ吠え始めるような場合には、犬が「吠えない選択」をするまで何度でも音を鳴らして下さい。
1回の練習で吠えやむようになるのは稀です。同じ練習を何度も何度も繰り返してようやく「吠えちゃいけないんだ」という事が分かり始めますので、分かるまで根気よく一貫性を貫いてください。
犬が傍にいない時には投げる
犬が吠え始めた時に犬が離れたところにいる場合には、ガシャン缶を投げてください。(なるべく犬のそばに落ちるように、でも犬に当たらないようにね!)
ビックリして吠えやんでいる隙に傍まで行き、吠えなくなるまでガシャン音を使ってください。
音を「小出し」にしない
先ずは小さい音から・・・なんてステップを踏んでいると、音に慣れてしまうだけです。最初から最大音量で鳴らし「ヒィィィー、二度と聞きたくない」と思わせてくださいね。
使いすぎない
使いすぎると慣れてしまって効果が無くなるので、何でもかんでも叱る道具としてではなく、本当に困っている行動を叱る時だけ使うようにしましょう
音だけに頼らないしつけを心がける
いつまでも音だけに頼ったしつけにならないように、ガシャンと慣らすときに「ダメ」という声と「気迫」もペアにしましょう。
練習を重ねると、いちいちガシャン音を使わなくても、「ダメ」の言葉を聞けるようになります。
「音に驚いて吠えやんだら、すぐ褒める」のは間違い
犬のしつけにおいて「褒める」というのはとても重要な事は皆さんもご存知でしょう。もちろん間違ってはいませんが、褒めるにもタイミングが重要です。
音を使って叱るしつけをしている時の「褒めるタイミング」は、吠えやんだときではありません。意外でしょう?
なぜなら、吠えやんだときは「ビックリして吠えるのを忘れちゃった」だけであって、自分から吠えやむことを選択したわけではないからです。
ビックリしたからオヤツもらえる=ガシャンと音がしたらオヤツがもらえると誤解しかねません。ガシャンと音がして吠えやんだときには、飼い主さんは表情を緩める程度でokです。
褒めるのは、いつもなら吠えるであろうタイミングで、犬自身が「吠えない」事を選択した時です。
ピーンポーン→吠える→ガシャン音→吠えやむ→ピーンポーン→また吠える→また音を鳴らす・・・・という繰り返しを数回も続けると、ある時「ピーンポーン」→「・・・・」(無言で飼い主さんをじっと見る)という行動が出る時が来ます。
こここそが褒め時です。この時点では、まだ犬は吠えないという選択が正しいのかどうか100%確信がない段階ですので、「そう!それが正しい選択!よくできたね!!」と褒めてあげることで、ようやく「ピンポンで吠えなければ褒めてもらえる」という学習が成立するのです。お分かりですか?
目に見える行動だけではなく、犬の心の動きにまで注目してしつけができれば、犬の理解スピードも早まりますよ!
クリッカートレーニングで褒めるしつけにも音を使おう!
犬は音に敏感な動物だという事を利用して、上手に「ダメ」を教える方法をお伝えしましたが、「それが良いよ!」と褒めるときにも音が大活躍します。
犬は褒められてナンボ。いつでも褒められたい。飼い主さんもいつでも褒めたい。ただ可愛いだけでも褒めたくなりますよね。
それ自体は悪い事ではありませんが、そうすると、「お座り」「フセ」などを教えるときに、普段の褒め方と同じでは、「それをして欲しいよ!」というメッセージが伝わりにくいんですね。
そんな時に活躍するのがクリッカーと呼ばれる小さな道具です。おやつとペアする事で、クリッカーの音=褒められる事 と関連づけ、良い行動をクリッカーの音で強化してゆくという使い方をします。
芸達者な犬の動画をYoutubeなどで見かけますが、ほぼ間違いなくクリッカーを使って訓練をしているハズです。映画で演技をする犬などもそうでしょう。クリッカーを使うと物事の覚えが良いという証拠です。
クリッカートレーニングの詳しい説明は下記記事からご参照ください。