しつけの基本

犬が震える理由 分離不安の原因と対処法

犬が震える理由には様々なものがありますが、今日は極度の怖がりで震える犬について、そうなってしまった原因と対処法についてお話します。ひどくなると分離不安症という、一種の精神疾患にも陥いる可哀想な状態です。

怖がりの原因は、社会科不足

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社会化とは、犬が社会の一員として生活してゆく時に遭遇する様々な物事に慣らすを言います。様々な物事に「慣れた」犬は、どっしりとおちついて、ちょっとやそっとの事でアタフタしません。

社会化が出来ていない犬はどうなると思いますか?世の中のほとんどのものが怖くなり、遭遇する全てが非常事態!「見るもの聞くもの何もかもが怖い」という状態になってしまいます。外に出るとずっと恐怖で震えている犬、ほんっと多いです。毎日たくさんの犬たちを見ていますが、大げさではなく10頭に1頭くらいの割合でいますね。

社会化不足の現状

怖がりで震える犬になってしまう原因の一つとして挙げられるのが、子犬の時の社会化不足です。子犬の社会化期に経験すべきだった外の世界を体験することなく成長してしまったために、様々な事が未知、未体験。犬を見ると「壊そう!!!」と震え、話しかけられれば「なんだこの人!!!」と震え、大きな音がすれば「ヒィィィ、しぬぅ!」と震える。そんな状態です。

社会化不足は、震えだけでなく、そのほかの様々な問題行動の原因となります。自分が安心できるごく限定的な環境から一歩外に出ると恐怖に震えるだけでなく、見知らぬものから自分を守りたい一心で目に映るものけたたましく吠えたり、噛みついたりしてしまいます。

震えをはじめとする、社会科不足が原因の問題行動

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見知らぬ人、犬、物などへの過剰反応(吠える、噛む、思考停止など)

社会化が出来ていないという事は、言い方を変えれば「見知らぬ状況に対してどうすればいいのか分からない」んです。とにかく、何もかもがこわい、こわい、こわい・・・・震えが止まらない・・・・。自分が安心できる状況というものがあまりに限定的過ぎて、すべてのものに対して過剰に防衛的になり、震えて小さくなっているだけでは自分の身が守れないと感じると、「あっち行け!」と吠え立てたり、噛みついたりしてしまうんです。

こういう犬って、飼い主さんにとってはこの上ない位可愛いんですよね。分かります。自分がいなければ生きていけず、全力で自分を頼ってくる存在。自分が抱けば震えが止まる。もう愛しくて、愛しくて仕方がないですよね。気持ちはよ~く分かります。でもね・・・・。飼い主さんが更に過保護を続ける事で、犬は一生恐怖に満ちた世界で震えながら過ごさなければならないんですよ。ホント可哀想です。

留守番中の破壊行動・粗相・無駄吠え

恐怖が原因で震える犬を可哀想に思うあまり飼い主さんが過保護に育ててしまうと、犬は分離不安症になります。震えるだけでならまだしも、飼い主さんと離れると正常な精神状態でいられなくなるという精神疾患です。飼い主さんが居なくなったことが原因でパニックを起こし、どんどん膨らんでどうしようもない不安な気持ちを色々な形で解消しようとします。ブリブル震えているだけでは気持ちが収まらないのです。

家や家具などの破壊行動。壁を掘ったり、ソファを破いたり、よじ登ろうとしてカーテンを破いたり・・・・。これが大型犬だったら、ダメージは計り知れません。

飼い主さんが不在にするとそこら中に排泄をしてしまう犬もいます。緊張からお腹が緩くなるケースもありますし、単純に飼い主さんの注意を引くためだったりもします。

自傷行為をする犬もいます。手の爪が剥がれて血が出ていてもまだドアをひっかき続ける犬、皮膚が破れるまで足をなめてしまう犬。自分の耳を食べてしまったビーグルの話も聞いたことがあります。

それから、無駄吠え。飼い主さんが飼えるまで、声がの限りに吠え続ける犬。ご近所さんもたまりません。

このように、分離不安が原因で飼い主さんを困らせている犬をしつけようとしても、精神的に不安定な状態では学習も身につかず、大変しつけがしづらくなります。分離不安を根本から治療してゆかなければなりません。

一人で留守番が出来ないのであれば、飼い主さんが犬と24時間365日一緒にいてあげればいい話なのでうすが、人間ってそう暇なもんじゃありません。ちょっとスーパーへ出かけたり、子供の用事で1日外出したり、親戚の法事で数日拘束されたり・・・と犬を連れていけない用事も様々あります。 そんな時に、犬がずっと震えながら自分の帰りを待っているかと思ったら、飼い主さんも落ち着きませんよね。恐怖の原因を取り除き、人も犬もゆったりと、恐怖なく一人の時間が過ごせるようにしつけのし直しをしてあげる事が本当の愛情ではないでしょうか。

社会化不足になってしまう原因

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子犬を飼う事になったら、誰もが「いい犬に育てたい!」と思うものでしょう。最初から震える分離不安犬にしようと思っている飼い主さんなんて存在しないと思います。それでも、なんと震える犬の多い事か!なぜこんなことになってしまうのでしょうか?原因を探ってみました。

これはちょっと言いづらいんですが、獣医さんが原因の一つだと思います。子犬を連れて初めての診察に行くと、「ワクチンが終わるまで外に出さないでね」と言われるのが一般的でしょう。基本的に、子犬のワクチンは生後60・90・120日を目安に接種します。生後120日って・・・17週です(汗)。獣医さんの言う通りにしていたら、社会化に一番適している12週までを完全に室内で過ごすだけになってしまいます。

訓練士の意見を言わせていただくと、ワクチン接種の完了まで自宅のみで過ごすなんて、問題犬を作る為のレシピのようなものです。

獣医さんはの仕事は犬の身体の健康を守る事ですが、訓練士の仕事は、犬の心の健康を守る事。 犬の心の健康について考えたことはありますか?身体だけでなくこころも健康な犬に育てるためには、子犬のうちの社会化体験が必要不可欠です。「主従関係」や、人間界のルールを教える「しつけ」とはまた別の話です。

獣医さんを敵に回したいのではないですよ。獣医さんは獣医さんのお仕事をされているだけですから悪くありません。単純に、飼い主さんにとって訓練士よりも獣医さんの方が身近な存在で、逆に訓練士は問題行動に困るまで必要とされない事が多いので、「社会化重要だよー!」との声が届きにくいのが原因です。

犬の健康な生活を実現するために、獣医さんと同じくらい重要な役割を担っているのに、あまり認識されていないのが現状。もっと飼い主さんの生活にグイグイ影響を与える存在にならなくてはいけないなと反省する次第です。このようにブログを書く事で、分離不安になる原因を飼い主さんに周知させ、少しでも震える犬を減らしてゆくことができれば、訓練士として幸せです。

震えるほどの恐怖とはサヨウナラ!社会化を進めよう。

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震える、吠える、噛むなど、表面的に見えている問題行動だけにフォーカスしていても、問題行動の原因となっている根本を直さないと問題行動は直りません。社会化は、犬が年を取ればとるほどしづらくなります。一番社会化に適しているのは、子犬の「社会化期」と呼ばれる生後12週までの時期ですが、この時期を逃してしまっていても、社会化が絶対無理な訳ではありません。あゆみは遅いかもしれませんが、少しずつ、すこしずつ、世界がどんなに素敵なことに満ち溢れているかを教えてあげまししょう!

「よしゃ!社会化、やってやろうじゃないの!」と奮起した飼い主さんのために犬の社会化の進め方についてお話しましょう。やらなければならない事はいたってシンプルです。様々なもの・ことを体験させればいいんですよ!色々な所に連れてゆき、見させ、聞かせ、嗅がせ、感じさせるのです。そして、「やってみたら怖くなかった!」という体験に繋げていってください。具体的な例を挙げてみました。

人:男性・女性・お年寄り、子供、赤ちゃん、白人、黒人、ヒゲをはやした人、帽子やヘルメットをかぶった人、走る人、杖をついて歩く人、車椅子の人、白衣や作業着、長靴を履いた人、自転車に乗った人、声の大きい人

犬:きい犬、小さい犬、モジャモジャの犬、つるつるの犬、フレンドリーな犬、ハイパーな犬、吠える犬、唸る犬。

感触:アスファルト、土、泥、砂利、草地、マンホール、排水溝、水溜り、動く地面、滑る床、雪

動物:普段の生活の中で目にすることがある動物。 猫、野鳥、りす、アヒルなど

音:車、トラック、電車、新幹線、工事現場、スーパーの音楽、お祭り、雷、子供のはしゃぐ声、赤ちゃんの泣く声、玄関のインターホン

環境:風呂、階段、公園、繁華街、ドッグラン、お店(ホームセンターやペットショップ)、車の中、人混み、お祭り、工事現場、海、川

状況:家に他人が入ってくる、知らない人に突然なでられる、散歩中に話しかけられる、シャンプーされる、鏡にうつる自分

■■■ 社会化を進めるときの注意点 ■■■

社会化体験をさせるのに、これまでと同じように腕の中で震える犬を抱いていては意味がありません。それがそもそもの原因でもあるのですから。犬は自分で殻を破らなければなりません。自分で歩かせましょう自分の足で歩き、自分の意志でにおいを嗅いで初めて「自分でできた。怖くなかった」という自信につながるのです。

犬が恐る恐るでも、新しい事に向き合おうとしているとき、飼い主さんはどうしてればよいのでしょうか?犬は、群れのメンバーの反応から、物事の性質を学びます。飼い主さんは、犬の反応に一喜一憂せず、どっしりと構えて見守ってください。震えていても、手助けは必要ありません。犬が自分の意志で行動してこその社会化体験です。犬が自分で第一歩を踏み出すのを根気よくじっと待ってあげましょう。

人間の素直な愛情表現では、ビックリで怖がる犬を見ると、抱き上げて助けてあげたくなるものですが、それはいけません。今体験した事が「怖いこと」とインプットされてしまい、以降それが「怖いもの」として認識されるようになってしまいます。無駄吠え犬への直行便です。犬が自分から探索するのを見守ってあげてくださいね。もし、どうしても犬が一歩を踏み出せないようなら、飼い主さんが「怖くないよ」を実践して見せてあげてください。

初めてのものに、震える犬を無理やり近づけて「ダイジョブ、ダイジョブー♪」なんてやるのもダメですよ。犬が自分から探索するのを見守ってあげてくださいね。もし、どうしても犬が一歩を踏み出せないようなら、飼い主さんが「怖くないよ」目の前で実践して見せてあげてください。

身の回りで起きることは、全て「なんでもないこと」であり、震えたり、威嚇したりする必要などまるで無いものだということを、飼い主さんのおちついた心を通して教えてあげてください。 犬に愛情を与えるのは、犬が落ち着いているときだけ。とても大切な事ですので、しっかりと心に刻んでください。

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(最終更新 2023年12月20日)

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