しつけの基本

クリッカーを使って犬をしつけよう。犬が好きな「音」の応用術

クリッカーという、「カチッ」と音の鳴る小さな道具を使って、犬に「人間とのコミュニケーション」の取り方を教えてゆくしつけの方法を紹介します。人と犬との良好なコミュニケーションって犬との快適な暮らしに於いてめちゃくちゃ重要です。

クリッカートレーニングは、犬のしつけの大前提として私が提唱する犬との快適な生活を実現するための三大要(「主従関係を築く」「社会化をする」「人とのコミュニケーションの取り方を教える」)のうちの3番目、「人とのコミュニケーションの取り方を教える」という部分を強化してくれます。

犬のしつけというと大げさに身構えてしまいがちですが、クリッカートレーニングは、犬と飼い主さんが楽しく遊ぶ感覚で行うものです。

楽しく遊んだら、自然としつけまで出来ちゃった!という一石二鳥のトレーニングですので、実践しない手はありません。

音を使ったクリッカートレーニングで目指すもの

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クリッカーで教えるのは、「しつけ」というよりは基本的には「芸」が多いのですが、芸を通して犬に教えたいのは、「飼い主さんの言葉には意味があるから、きちんと聞いて理解してね」というところです。

クリッカーを通して芸達者にはなりますが、そうすることが直接の目的ではありません。

犬が理解できる単語に限界はありません。語彙が増えれば増えるほど、犬は飼い主さんの言葉を集中して聞くようになります。

また、「自分に何かして欲しいんだな」という所も理解するようになりますので、常に「言う事聞くよ!」という姿勢も出てきます。 犬のしつけに非常に重要な部分です。

主従関係をしっかり築いてしつけは出来ているはずなのに、全然いう事聞いてくれない!という場合には、もしかしたら単純に「何言ってるのか分かんないもん・・・・・」と思っているだけかも知れませんよ。

もったいないですね~。

人間の言葉に意味がある事を教えてもらえない犬は、人間とのコミュニケーションの取り方があまり上手ではありません。

飼い主さんが何か話しかけても一方通行です。しかし、クリッカートレーニングを通して、人の言葉の意味を教えられている犬は、話しかけられると「何を言おうとしているのかな」と言葉に耳を傾けて、それを理解しようとします。

ここで、双方の気持ちが通じ合うコミュニケーションが成立するのです。

「人間と一緒に暮らす」家庭犬において、非常に重要なしつけだと思いませんか? また、犬が何か飼い主さんに言いたいことがあるときにも、一方的な方法での要求になりません。

例えば・・・

「お腹が空いたからオヤツがほしいな」と思っている犬がいたとします。飼い主さんとのコミュニケーションの仕方を知っている犬は、オヤツが入っている引き出しの前にお座りをして、じっと飼い主さんを見るという行動が出来るようになります

どうしたいいか分からない犬は、ワンコラ吠えて飼い主さんの注意を引こうとします。どちらが「しつけが行き届いた犬」でしょうか?

あなたなら、どっちの犬と暮らしたいですか?

もちろん、前者ですよね!!

じゃぁ、いつやる?

今しかないでしょ!

早速クリッカーを使ってトレーニングを始めてみましょう!

ステップ1 クリッカーの音の条件付け

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この段階では、クリッカーの「カチッ」という音は犬にとって何の意味もない音です。嬉しくもないし嫌でもない音でしょう。ここではクリッカーの音を「嬉しい音」「もっと聞きたい音」と条件付けをしてゆきます。

  1. 犬の大好きなおやつを小さく刻み、20~30粒ほど準備します。
  2. まず一粒おやつをあげ、興味を引き付けます。
  3. 「ほしい」という素振りを見せているときに、クリッカーを鳴らし、すぐにおやつを一粒あげます。(*「カチッ」と音がしてからオヤツを差し出します)
  4.  準備したおやつが無くなるまで③を続けます

注意点

  • しつけの初期段階での基本ですが、なるべく外部の刺激の少ない場所で行うと効果的です。犬の興味が反れて飼い主さんから離れてしまった時には、②に戻り、注意を引き付けてから続行してください。
  • クリッカーは犬リモコンではありません。犬の顔の前にクリッカーを差し出して「カチッ」と鳴らす必要はありません。ハンドシグナルと混同しないよう、大げさな動きは付けないように心がけましょう。

ステップ2 行動の瞬間を捉えてクリッカーの音を鳴らす

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このステップでは、教えたいことを犬がした「瞬間」に クリッカーを鳴らし、「そう、それもっとやって!」という事を犬に教えます。

して欲しい行動をオヤツや手を使って誘導しますので、犬は手の動きを見て要求の内容を判断します。いわゆる、ハンドシグナルというやつです。

しつけ訓練の基本となる「お座り」をクリッカーで教える場合

  1. おやつを鼻先で動かしたり、手でお尻を押してあげるなどして、お座りの体勢を促します
  2. お尻が地面についた瞬間にクリッカーを鳴らす
  3. おやつをあげる
  4. ①~③を何度も繰り返し根気よく行う

おやつを鼻先で動かす、手でお尻を押してあげる等の動作がハンドシグナルとなります。ハンドシグナルを出すと、10回に8回位は考えずに自動的に行動が伴うようになってきたら、次のステップに進みます。

注意点

  • クリッカーは瞬間を捉えることに意味があります。瞬間を逃してしまうと、「何が良いのか」が犬に明確に伝わらず、効果がありません。例えば、犬にジャンプをする事を教えるとします。この時、クリッカーを鳴らすタイミングは、カメラでジャンプする犬を撮影するタイミングと同じだと考えてください。シャッターを押す瞬間がズレてしまったら、写真に写るのはジャンプする前の体勢だったり、着地後の体勢になってしまうでしょう。 ジャンプしたその瞬間を捉えてこそ、宙に舞う犬の姿が捉えられるのです。
  • このステップでは、言葉の(号令)はまだ掛けないこと!号令をかけるのは、行動が伴ってから。

ステップ3 ハンドシグナルの除去と言葉による号令

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ステップ2では、犬はハンドシグナルを見て飼い主さんの要求を理解することを教えました。でも、ハンドシグナルを出さなければ行動が伴わないのではちょっと不便です。

このステップでは、遠くからでも、後ろを向いていても言葉の号令で従わせることが出来るよう、「言葉に意味があるよ!」という事をクリッカーを使って教えてゆきます。

  1. 犬の注意がこちらにある事を確認し、「お座り」と声を掛ける
  2. 言葉を発し終わったら、ステップ2で教えたハンドシグナルを出します。
  3. 犬が座ったら、クリッカーを鳴らす
  4. おやつをあげる
  5. ①~④を繰り返しながら、ハンドシグナルの動きをすこしずつ小さいものにしてゆく
  6. 最終的に、「おすわり」のコマンドだけで行動が伴うようにしてゆく

注意点

  • このステップは、時間を掛けずに出来るだけ早くクリアすることが肝心です。ハンドシグナルを見ることに慣れてしまうと、手の動きばかりに頼り、言葉に注目しない犬になってしまいます。
  • 「お座り」と声を掛けるタイミングと、ハンドシグナルを出すタイミングが重ならない事に注意!

ステップ4 しつけを一般化する

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犬が学習するとき、その行動はその環境や状況と結びつけて学習します。例えば、「お座り」を学んだのが、「リビングルームで、お母さんを前にして」だとすると、その状況でのみコマンドを理解します。

状況が変わり「キッチンでお母さんを前にして」や、「リビングルームでお父さんを前にして」では、同じコマンドを言われても、理解ができないのです。

そこで、どこでも、どんな状況でも学んだことが生かせるように訓練しなければいけません。これを一般化と呼びます。クリッカーがあれば、犬にとってあれこれと刺激的な場所でも、音に集中することが出来ます。

 

さぁ、!クリッカーとオヤツをもって、色々なところへ出かけましょう!

 

一般化は、ステップ2、ステップ3の訓練を、そのまま別のさまざまな状況で行うだけです。なるべくたくさんの場所で練習し、異なった環境(人が多い場所、車が通る場所など、犬の気が散る場所)でもできるようにしましょう。

一般化の訓練を複数の場所で重ねると、ある時から「環境や状況に関わらず、お座りはお座りなんだ」と理解できるようになります。

こうして一般化が確立されれば、初めての場所でもなじみのあるコマンドは理解・実行できるようになりますので、その時点でクリッカーは不要になります

クリッカーは、言葉の意味を教えるときだけ使うものですので、いつまでのも「クリッカー+おやつ」で褒めるのはやめて、「言葉+愛情」で褒めることに置き換えていってくださいね!

ステップ5 しつけの維持・メンテナンス

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メンテナンスとは、「維持」という意味です。犬に学ばせた事には、飼い主が責任を持って継続させるという事です。

犬のしつけにおいて非常に重要なことですが、一体どういう意味でしょうか?

「おすわり」=座ると教えたからには、号令を出したら必ず座らせる。一度決めたルールは一貫性を持って守らせてこそ、日々の生活に生きるしつけとなる、という事です。

「今日はそんな気分じゃないみたいだからいいや」なんて、号令を出しておきながら座らせることをしないのは、「おすわり」=「座っても座らなくてもどちらでもいい」と教えているようなものです。

「お座り」と号令を出したにも関わらず座らなかった場合には、威厳ある態度で、お尻を押して強制的に座らせるなどして、必ずコマンドを守らせるようにしましょう。

このステップにたどり着いたという事は、これ以降はクリッカーを使う必要はありません。たま~に思い出したように使ってみるのは良いですが、クリッカー訓練の最終ゴールが「言葉だけで犬とコミュニケーションが取れるようになること」である事をお忘れなく!(また新しい言葉を教えたいときにはもちろん使います)

注意点

一度「おすわり」と言って座らなかったら、2度、3度と「おすわり!」を繰り返さないで下さい。何度も言わないと座らない犬になってしまいます

クリッカートレーニングのまとめ

どうですか?クリッカーをつかった犬のしつけ、できましたか?

クリッカー訓練は、犬にとって楽しいものであるべきです。「しつけ、しつけ!」と肩肘張らず、犬と遊ぶつもりで飼い主さんも楽しんでくださいね!そうすると、自然と犬も楽い気持ちになってきます。ぜひ犬と一緒に目いっぱい楽しんで、色々な芸を増やしていってくださいね!!

あ、そうそう。一つだけ重要な事を言い忘れました。クリッカー訓練だけに限らず、犬にしつけをする時に必ず気を付けなければいけないのは、「やりすぎない」ことです。

人間でもそうですけれど、どんなに楽しいことでもやり過ぎると飽きてくるんです。そして、一度飽きてしまったことは、「またやろう、またやりたい」という気持ちになりにくいんです。1回のクリッカー訓練は、犬が飽きる一歩手前でやめることを心がけてください。

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(最終更新 2023年12月20日)

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