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犬の避妊・去勢手術の方法とは?獣医師が手術の流れを詳しく解説します!(獣医師作成記事)

避妊・去勢手術についてインターネット上で調べると、メリット&リスクや値段についての話が多いですよね。手術を受けさせることは心に決めてるけど、実際我が子がどんな流れで手術に望むのか不安に思う方も多いはず。
そんな方のために手術時期の決定、術前検査、手術当日、入院するかどうか、といった一連の流れを詳しく解説していきます。

避妊去勢手術の流れ

今日は「犬の避妊去勢手術を受ける際の流れ」について、手術前、手術当日、手術後の3段階にわけて、獣医師のとうの先生に詳しくお話を伺いたいと思います。とうの先生、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。

*本記事で紹介している内容はあくまで一般的な流れであり、動物病院や各獣医師の方針によっては異なる場合がありますことを、あらかじめご了承ください。

手術前

まず避妊去勢手術を受ける前段階についてですが、どういった流れで手術を受ける時期を決めるのでしょうか?
はい。手術時期は1歳以下であればワクチンが終わってしばらく経ち、体調が安定している時に受けることをお勧めしています。体の成長具合、将来の病気の予防、問題行動を抑えしつけがスムーズになることなどから、おおよそ6ヶ月ごろを目安に手術を勧めている動物病院が多いですね。
以前も手術時期の決定についてはお話してくださっているので、詳しくはそちらを参考にしていただけるといいかもしれません。

記事を読む→【獣医師が教える】犬の避妊去勢手術はいつすればいい?病気との関係と手術時期の決定

手術日の最終決定は主治医との相談によって決まりますので、初年度のワクチンを打ち終わる頃に主治医の先生に「避妊去勢手術を受けさせるつもりでいること」を伝えましょう。手術の意向を伝えれば、その後の段取りについて説明があるはずです。

手術当日

では次に、手術当日のお話を聞かせてください。私の愛犬の場合は、手術当日の朝に病院に預けて、夕方に迎えにいきました。事前の説明で「先に検査をして手術します。」とは聞いていましたが、具体的に病院でどんなことが起きているのか教えてください。
はい。避妊去勢手術では手術の相談時など、事前の診察で健康そうであると判断された犬猫の場合、当日の朝にお預かりとなります。麻酔時の誤嚥や術前検査の値の変動を防ぐために、当日の朝はご飯を与えないよう指示があると思います。お預かり後、術前検査をして問題なさそうなら手術となります。下に大まかな流れを書き出してみました。
飼い主様からお預かり 直近と当日の体調の確認。
術前検査 一般身体検査、血液検査など。
昼ごろ 手術実施 全身麻酔下で行います。
一時入院 麻酔から覚めて、お迎えの時間まで病院で体調をみます。
その日の夕方

〜翌日

退院 手術後のケアについて説明を受け、退院します。
1〜2週間後 抜糸 手術後の体調確認も含め、診察をして抜糸を行います。

 

この「術前検査」とはどういったことをするのですか?
心臓、肝臓、肺、腎臓などに持病がある場合、麻酔と手術のリスクが上がってしまいます。そういった持病がないかどうかを確認するための検査ですね。触診や聴診、検温などの一般身体検査は必ず行われます。日本では血液検査も行う病院が多いです。さらにレントゲン検査やエコー検査、心電図検査を行う場合もあります。術前検査の内容は、病院や動物の年齢などによって変わってきますから、かかりつけがどんな検査を行うのかは事前に確認しておきましょう。
なるほど。事前にできるだけたくさん調べてもらった方が安心できますね。もちろん、その分お値段も変わってくるのだと思いますけど…。
そうですね。動物病院は「自由診療」といって検査や処置の値段を病院が自由に決めることができます。全く同じことをしても、病院によって違う料金となることがあります。納得して手術にのぞむためにも、検査と処置の内容を事前に確認しておくことは大切です。もちろん経験や技術、使っている機材も様々ですから、値段だけでは一概に言えないですし、手術をするとなれば主治医や看護士さんたちとの信頼関係もとても重要です。
そうですよね。いくら安くても信頼関係のない先生だと不安です。しっかり説明してくれて、しっかり検査をしてもらえるところを、私も選びます。では、次に麻酔をかけての手術について教えていただけますか?
はい、わかりました。何よりここが、飼い主様が一番気になるところですよね。手術は全身麻酔で行います。今回は手術の時に一般的に行われる”ガス麻酔”の流れの一つを説明しますね。
  1. 痛み止めや鎮静剤の注射をして、鎮静(深麻酔の手前)する。
  2. 注射麻酔で眠らせると同時に気管挿管(気管チューブを入れて気道を確保)を施し、ガス麻酔に切り替える。
  3. ガス麻酔で麻酔を適切な深さに保ちながら、処置を開始する。
  4. メスの場合はお腹を切開して、卵巣と子宮(または卵巣のみ)を摘出する。オスの場合は陰のうを切開し、精巣を摘出する。この時に、乳歯抜歯など他に必要な処置があれば実施する。
  5. 処置が終了したら麻酔を止め、覚醒させる。
  6. しっかりと目が覚めたことを確認して一時入院室へ。
他にも注射麻酔だけで手術をする場合や、ガス麻酔までに使う薬剤が違うといった場合もあります。手術の時の止血方法も、機械で止める方法や糸を使う方法、オスでは自家結紮といって糸も機械も使わない方法もあります。麻酔薬や手術方法の選択は病院によって違いますし、どれが一番良いのかなどは一概に言えないですが、気になる方はかかりつけで聞いてみるといいでしょう。
へえ〜!いろいろな方法があるんですね!手術時間はどのくらいかかるのですか?
避妊手術または去勢手術のみの場合は、通常1時間以内には終わります。
早いですね!うちの子はその日のうちに退院しましたが、その日はちょっと疲れたようで大人しかったです。入院することもあるのですか?
はい。男の子の場合は体の外側を切るので、出血も少なくその日のうちに退院できることが多いです。女の子の場合はお腹の中を手術するので、オスに比べると侵襲度が高く、1泊入院となる病院もありますね。もちろん絶対のルールはないですから、オスでも入院する場合もあれば、メスでも日帰りとなることもあります。
その辺りも病院の方針と本人の体調によるということですね。

手術後

では最後に、手術後について解説をお願いします。
はい。まず手術が終わり退院したその日は、必ず常に見てあげられる場所にいてください。お仕事をされている方も、可能なら当日から2〜3日は休んでください。手術後は急な体調の変化はもちろん、わんこ本人も痛みや不安があります。信頼する飼い主さんが近くにいるだけでも違います。ただし、手術後は疲れているので過剰にかまったり、激しく遊んだりしないように気をつけてくださいね。
わかりました。手術後は包帯などの手入れが必要ですか?
傷口を舐めて開いたりしないよう、首に巻くエリザベスカラー、または服型の包帯を装着します。とはいえ、どうにかして傷口を舐めてしまう子もいますので、傷口を舐めた痕跡がないか、血が滲んできていないかなどは、抜糸の日まで毎日チェックしてください。服型の包帯の場合はひどく汚れない限りは交換の必要はありません。エリザベスカラーを着けている場合は水やご飯の時に引っかかって困ることがあるので、お皿を少し高めに設置したり、お皿自体を持ってあげるなどして補助してあげてくださいね。
「抜糸まで」とのことですが、抜糸はいつするのですか?
手術部のくっつき具合にもよりますが、術後1〜2週間で抜糸をします。抜糸が必要ない「埋没法」という縫い方もありますが、この縫い方をしている場合も、膿んでいないか?腫れていないか?など、術後の経過を診てもらう意味でも診察を受けた方が良いでしょう。

終わりに 避妊・去勢手術の心構えをもとう

  • 避妊去勢手術は「手術の相談→手術当日の術前検査→手術→家での経過観察→抜糸」という流れで進む。
  • 手術プランは主治医としっかり相談して決め、事前に十分な説明を受ける。
  • 手術の後は、常に見ていられる場所で安静にしてもらう。
  • 手術の前も後も、体調を毎日チェックする。
なるほど。ありがとうございました。流れを先に知っておくと心構えができますね。
不妊手術は初めて犬を飼う方にとっては、一大イベントですからね。少しでも手術への不安や疑問を解決できれば嬉しいです。
ABOUT ME
「世界を旅する獣医師」 唐野智美
山口大学獣医学科卒 卒業後、東日本大震災の被災動物保護シェルターを併設する一般動物病院にて診療業務に従事。シェルター閉鎖後は、世界各国の動物事情を体感するために単独で世界一周。帰国後、福岡の救急動物病院にて救急獣医療に従事し、緊急性の高い疾患の診療、手術を多く請け負う。同時期に、人と動物との共生について伝えるための「世界一周動物写真展」を全国5都市で開催した。先進的なシェルターを見学するためのオーストラリア滞在など、日本の動物福祉向上を目標として積極的に活動中。