人も動物も、ストレスがかかるとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが出てきます。これは普段から身体の健康を維持するために必要なホルモンです。
しかし、強いストレスが持続的にかかることで、血中のコルチゾール値が常に高い状態が続いてしまうと、免疫力の低下など様々な悪影響を及ぼします。
人では職場や家庭のストレスがコルチゾールの上昇と関係しているとされていますが、犬でも生活環境などのあらゆるストレスでコルチゾール値が上昇します。
犬のストレスによる免疫低下に注意
新しく来た子は先住の子より体格がいいから怖がってしまっているのかな、と思うのですが、この状態が続いたらストレスで病気になってしまったりしないか不安で相談にきました。
犬のストレスと免疫力の関係
ストレスがかかるとコルチゾールと呼ばれるストレスホルモンが分泌されたり、自律神経が刺激されたりと、様々な反応が身体の中で起こります。
このストレスホルモンや自律神経の調整は身体を守るために本来必要なものですが、長く続く強いストレスは、結果的にリンパ球などの免疫細胞の働きを抑制させてしまうなど、免疫力の低下や、自己免疫疾患の発症、アレルギーを引き起こす可能性が高まると言われています。
ストレスの種類も様々で、気温の変化もストレスになりますし、人では職場や家庭などの生活環境でのストレスがコルチゾール値を上昇させると言われています。
動物も同じで、犬では暑さや騒音、激しい運動や逆にケージに入れられた時、大きな犬と対面した時などにコルチゾール値が上昇することが分かっています。
科学的な意味での「ストレス」とは、気持ちの問題だけではなくて、周りの環境の変化というものも含まれます。
でも、おっしゃる通りで、先住犬の子が新しく来た子を怖がっているからという理由で手放すなんてできるわけがないですよね。となれば、慣れさせるしかないのです。
犬のストレスへの対処法
先にもお話したとおり、「ストレス」とは精神的な問題だけではなく、気温の変化などに対する生体反応のことも含みます。
犬のストレスへの対処法は主に2つ。
1.ストレスの原因(ストレッサー)を取り除く。
2.ストレスの原因に慣れさせる。(脱感作)
ストレスの原因を取り除く、というのは、これができるのであれば1番の方法です。
暑いことがストレスなら暑くないように工夫すればいいですし、散歩コースに騒音のでる工事現場や大型犬のいる家など、本人にとって怖いものがあるのであれば、散歩コースを変えればいいのです。
2つ目はストレスの原因に慣れさせること。
人の精神医学界では「脱感作法」という治療法があります。
(アレルギーでも使われる言葉ですが、基本的な考え方は同じです。)
恐怖や不安の原因となっているものに弱いレベルから触れさせて、徐々に強くしていくうちに慣れさせる、という方法です。
もちろんこれは人の医療のお話ですが、犬のしつけではすでに使われている手段です。
「徐々に慣れさせていく」という方法は環境によって異なりますので、詳しくはしほ先生に直接相談されるとよいかと思います。
(他の犬に怖がる、掃除機を怖がる、動物病院に行くと怖がる、車を怖がる、、、すべて対処方法も異なってきます)
先住のチワワは飼い主さんのことを信頼していますから、その飼い主さんが新しくきたわんこと触れ合っているのを見せることで、相手に対する警戒や不安感は徐々に和らいでくれるはずです。
突然飛びかかったりしないよう、しつけも必要です。
先住の子の詳しいトレーニングの方法や、新しくきた子のしつけについては、しほ先生に聞いてもらうのが確実です。
終わりに 愛犬の免疫力のしつけの関係性について
そして、犬や猫や馬といった脳の発達した動物では、コルチゾールの上昇といったヒトと同じようなストレス反応が起きることがわかっています。
とうの先生が先ほどお話してくれた「徐々に慣れさせる」というトレーニングは、しつけの方法としてすでに取り入れていますよ。
しほ先生、これからもよろしくお願いしますね!
【参考文献】
1、川口晃太郎 他「唾液中クロモグラニンAおよびコルチゾール測定によるイヌ生理および心理ストレス受容の推定」Bulletin of School of Agriculture, Meiji University2008年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://ci.nii.ac.jp/naid/40016024759/
2、安藤泉「イヌにおける様々な外因性ストレスの評価指標に関する研究」一般学位論文2012年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://tuat.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=1417&item_no=1&attribute_id=16&file_no=2
3、永田頌史「ストレスによる免疫能の変化と脳・免疫連関」JuoEH(産業医科大学雑誌)1993年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/15/2/15_KJ00002623664/_pdf/-char/ja
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine1927/70/5/70_479/_pdf/-char/ja
5、Robert J. 他「Catecholamine-Induced Leukocytosis: Early Observations, Current Research, and Future Directions」Brain, Behavior, and Immunity1996年(最終閲覧:2020年4月10日)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0889159196900094?via%3Dihub