獣医師の記事

犬の食欲不振や嘔吐下痢はストレスのサイン 対処方法を紹介(獣医師作成記事)

強いストレスがかかった時に嘔吐や下痢をしてしまうという現象は犬猫でよく見られますし、人でも聞くことがあります。

これは単純に「気持ちの問題」と言って片付けられるものではなく、脳の反応と腸の動きが密接に関わっていることが原因となっています。

今回は「食欲不振や嘔吐下痢の症状が見えた場合にどの様な対応をするべきか」を、獣医師の先生に解説いただきます。

愛犬の食欲不振を放っておくと大変なことに

今回は、一緒にお出かけをすると愛犬が食欲がなってしまったり、嘔吐してしまうことがあるという方がご相談にいらっしゃっています。とうの先生、よろしくお願いします。
相談者様、初めまして。獣医師のとうのです。よろしくお願いいたします。
今回の相談者
今回の相談者
 初めまして。よろしくお願いいたします。

うちの犬ですが、子供の頃からお出かけをするとご飯を食べなくなったり、食べても吐いてしまったりすることがよくあります。ひどい時は下痢をする日もあります。なぜでしょうか?

そうなのですね。食欲不振や嘔吐下痢の相談は病院でとても多いものになりますが、普段は問題ないのに、何かをきっかけにそういった症状が出るというのは気になりますね。

犬種と年齢を教えてもらってもいいですか?

今回の相談者
今回の相談者
はい。4歳のウェストハイランドテリアです。何かの病気なのでしょうか?
ウェスティですね。わかりました。では、順を追ってお話していきます。

まず、食欲不振、嘔吐や下痢といった症状は必ず病気が関わっているというわけでなく、ストレスに対する反応として見られることがあります。これを「脳腸相関」と言います。

脳腸相関についてお話する前に、お出かけは「いつもと違う環境になる」ことであり、大なり小なり人にも動物にもストレスとなる、ということをまず念頭に置きましょう。

脳腸相関ー犬のストレスと脳・腸の関係

「脳腸相関」とは、簡単に言うと「ストレスがかかると脳が反応して腸の動きが変わる」というものです。人前で発表しないといけない時に、お腹が痛くなったり胃がムカムカしたりするという方は多いと思いますが、これはこの脳腸相関が関係しています。

身体的ストレス(気温変化や大怪我、手術などの侵襲)と精神的ストレス(不安、緊張など)がかかると、脳からCRFと呼ばれるホルモンが出ます。このホルモンは胃や十二指腸の動きを鈍くし、大腸の動きを活発にする作用があります。

胃や十二指腸の動きが鈍くなると胃のむかつきや吐き気が、大腸の動きが活発になると下痢を起こしてしまいます。

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※より詳しく知りたい方への補足※
脳腸相関についての反応は現時点では主に人間の研究で提唱されていることですが、研究の過程で動物も研究されていることや、災害時など強いストレスがかかった時に動物でも嘔吐下痢で動物病院を受診する件数が増えていることから、動物でも同じことが起きていると考えられます。

他にも、ストレスによって腸の血流が悪くなることで消化性潰瘍を起こしてしまう一因になる、ということは動物の研究でもわかっています。
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今回の相談者
今回の相談者
ということは、ご飯を食べない原因は病気じゃなくてストレスが原因ということですか?
ストレスが食欲不振や嘔吐下痢を引き起こすことは周知の事実です。
がしかし、病気が関わっていないとは絶対に言えません。

特に、ウェスティはアジソン病という病気を起こしやすいとされる犬種でもあるので、症状が強い場合は特に注意が必要です。

犬が嘔吐下痢を起こす病気

犬が嘔吐や下痢を起こす病気としては、以下の様なものが挙げられます。

・消化管疾患(胃、十二指腸、小腸、大腸の病気)

・肝臓、胆嚢、膵臓の病気

・内分泌疾患(アジソン病など)

・神経疾患(脳疾患、腸神経叢(ちょうしんけいそう)の異常など)

その他にも、身体中のあらゆる臓器が関連して嘔吐を引き起こす可能性があります。

ここで、特に急性ストレスとの関係性がある病気は消化器疾患と内分泌疾患(ないぶんぴつしっかん)でしょう。
今回の相談者
今回の相談者
消化器疾患は胃腸のことだろうってなんとなくわかるのですが、内分泌疾患とは何ですか?
内分泌疾患とは、体を維持するために必要なホルモンのバランスが崩れてしまう病気です。

特にアジソン病(副腎皮質(ふくじんひしつ)機能低下症)という病気は、ストレスがかかった時に症状が強く現れます。

アジソン病は体がストレスに対応するために出すホルモンを十分に出せないという病気ですが、ひどい場合はショック状態となり死に至ります。

今回の相談者
今回の相談者
え!怖い!うちの子もその病気かもしれないのですか?
相談者さまの愛犬はウェスティということですし、ストレスがかかった時に毎回そういった症状が出るのであれば、病院で検査をしてもらった方がいいかもしれませんね。

お出かけ中やお出かけ後にぐったりするようなことがあるなら、絶対に病院に行ってください。

今回の相談者
今回の相談者
そうなんですね!わかりました。まず病院で診察を受けてみます!

もちろん病気じゃないことを願っていますが、病気じゃなければ単純にストレスで食べないということですよね?

そうなりますね。となれば、境の変化によるストレスを軽減するためのトレーニングが必要になります。家への来客やどうしてもペットホテルに預けないといけない時など、予期せぬ環境の変化がいつ訪れるかはわかりません。

それぞれのわんちゃんの性格によって、必ずしもトレーニングで解決できるわけではないですが、ストレスを減らすための工夫はできるはずです。詳しいことはしほ先生に相談してみてください。

今回の相談者
今回の相談者
確かに、お出かけは本人が少しでも慣れている所とか、ストレスが大きすぎるなら行かないということもできますが、突然の来客や家族の法事でペットホテルに預ける時などはどうしようもないですよね…

念のためでも、環境の変化に慣れてもらえた方が良さそうなので、しほ先生に相談してみます!ありがとうございます!

終わりに 対処方法や病気になりやすい犬種・年齢

ストレスで嘔吐下痢をしてしまうという話はよく聞きますが、脳腸相関という体のシステムが関係していただなんて驚きです。それに、ストレスによって命を落とすかもしれない病気があるなんて怖いですね!
そうですね。私もストレス後の嘔吐下痢という症状で来院された患者さんたちには、よくお話を聞いて慎重に原因を探るよう気をつけています。

だいたいの場合は、一過性のストレスによるものやそのほかの胃腸の病気が原因ですが、アジソン病が疑われる場合はトレーニングでどうにかなるものではなく、病気の治療をしないといけないです。

単純にストレスが原因の場合は、環境変化に対応するためのトレーニングをしてみるのも大切だと考えています。

なるほど。ちなみにアジソン病を起こしやすい犬種や年齢はあるのですか?
どの犬種でも病気になり得ます。スタンダードプードルなどの中型犬や大型犬に多いとされていますが、日本ではウェスティ、ビーグル、トイプードルでも散見されます。

そもそも珍しい病気ではありますが、個人的には、パピヨン、イタグレ、柴犬で経験したことがあります。

年齢は2〜7歳で発症しやすいとされていますが、気付くまでに時間がかかることもあるので一概には言えません。

わかりました。私のしつけ教室で似たような相談があったときも気をつけるようにしますね。
それに、もし病気じゃないことがわかった場合は、ストレスに対処するためのトレーニングが重要だということもわかりました。ありがとうございました!

犬は言葉で伝えられないので、飼い主さんが気にかけてあげる事が大切です。うちの愛犬は大丈夫かな?と思ったら、ぜひご相談ください。

いまなら、しほ先生をはじめとするプロのドッグトレーナーたちが2週間無料で直接相談に乗っています。

LINEにてメッセージお待ちしておりますね。

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【参考文献】

1、福士審「脳腸相関とストレス」ストレス科学研究,2013年(最終閲覧:2020年4月23日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/stresskagakukenkyu/28/0/28_16/_pdf/-char/ja

2、水越 美奈「災害時に起こりうる犬の不安に対する対応と予防」ペット栄養学会報,2017年(最終閲覧:2020年4月23日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/20/1/20_59/_pdf/-char/ja

ABOUT ME
「世界を旅する獣医師」 唐野智美
「世界を旅する獣医師」 唐野智美
山口大学獣医学科卒 卒業後、東日本大震災の被災動物保護シェルターを併設する一般動物病院にて診療業務に従事。シェルター閉鎖後は、世界各国の動物事情を体感するために単独で世界一周。帰国後、福岡の救急動物病院にて救急獣医療に従事し、緊急性の高い疾患の診療、手術を多く請け負う。同時期に、人と動物との共生について伝えるための「世界一周動物写真展」を全国5都市で開催した。先進的なシェルターを見学するためのオーストラリア滞在など、日本の動物福祉向上を目標として積極的に活動中。