強いストレスがかかった時に嘔吐や下痢をしてしまうという現象は犬猫でよく見られますし、人でも聞くことがあります。
これは単純に「気持ちの問題」と言って片付けられるものではなく、脳の反応と腸の動きが密接に関わっていることが原因となっています。
今回は「食欲不振や嘔吐下痢の症状が見えた場合にどの様な対応をするべきか」を、獣医師の先生に解説いただきます。
愛犬の食欲不振を放っておくと大変なことに
うちの犬ですが、子供の頃からお出かけをするとご飯を食べなくなったり、食べても吐いてしまったりすることがよくあります。ひどい時は下痢をする日もあります。なぜでしょうか?
犬種と年齢を教えてもらってもいいですか?
まず、食欲不振、嘔吐や下痢といった症状は必ず病気が関わっているというわけでなく、ストレスに対する反応として見られることがあります。これを「脳腸相関」と言います。
脳腸相関についてお話する前に、お出かけは「いつもと違う環境になる」ことであり、大なり小なり人にも動物にもストレスとなる、ということをまず念頭に置きましょう。
脳腸相関ー犬のストレスと脳・腸の関係
「脳腸相関」とは、簡単に言うと「ストレスがかかると脳が反応して腸の動きが変わる」というものです。人前で発表しないといけない時に、お腹が痛くなったり胃がムカムカしたりするという方は多いと思いますが、これはこの脳腸相関が関係しています。
身体的ストレス(気温変化や大怪我、手術などの侵襲)と精神的ストレス(不安、緊張など)がかかると、脳からCRFと呼ばれるホルモンが出ます。このホルモンは胃や十二指腸の動きを鈍くし、大腸の動きを活発にする作用があります。
胃や十二指腸の動きが鈍くなると胃のむかつきや吐き気が、大腸の動きが活発になると下痢を起こしてしまいます。
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※より詳しく知りたい方への補足※
脳腸相関についての反応は現時点では主に人間の研究で提唱されていることですが、研究の過程で動物も研究されていることや、災害時など強いストレスがかかった時に動物でも嘔吐下痢で動物病院を受診する件数が増えていることから、動物でも同じことが起きていると考えられます。
他にも、ストレスによって腸の血流が悪くなることで消化性潰瘍を起こしてしまう一因になる、ということは動物の研究でもわかっています。
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がしかし、病気が関わっていないとは絶対に言えません。
特に、ウェスティはアジソン病という病気を起こしやすいとされる犬種でもあるので、症状が強い場合は特に注意が必要です。
犬が嘔吐下痢を起こす病気
犬が嘔吐や下痢を起こす病気としては、以下の様なものが挙げられます。
・消化管疾患(胃、十二指腸、小腸、大腸の病気)
・肝臓、胆嚢、膵臓の病気
・内分泌疾患(アジソン病など)
・神経疾患(脳疾患、腸神経叢(ちょうしんけいそう)の異常など)
その他にも、身体中のあらゆる臓器が関連して嘔吐を引き起こす可能性があります。
特にアジソン病(副腎皮質(ふくじんひしつ)機能低下症)という病気は、ストレスがかかった時に症状が強く現れます。
アジソン病は体がストレスに対応するために出すホルモンを十分に出せないという病気ですが、ひどい場合はショック状態となり死に至ります。
お出かけ中やお出かけ後にぐったりするようなことがあるなら、絶対に病院に行ってください。
もちろん病気じゃないことを願っていますが、病気じゃなければ単純にストレスで食べないということですよね?
それぞれのわんちゃんの性格によって、必ずしもトレーニングで解決できるわけではないですが、ストレスを減らすための工夫はできるはずです。詳しいことはしほ先生に相談してみてください。
念のためでも、環境の変化に慣れてもらえた方が良さそうなので、しほ先生に相談してみます!ありがとうございます!
終わりに 対処方法や病気になりやすい犬種・年齢
だいたいの場合は、一過性のストレスによるものやそのほかの胃腸の病気が原因ですが、アジソン病が疑われる場合はトレーニングでどうにかなるものではなく、病気の治療をしないといけないです。
単純にストレスが原因の場合は、環境変化に対応するためのトレーニングをしてみるのも大切だと考えています。
そもそも珍しい病気ではありますが、個人的には、パピヨン、イタグレ、柴犬で経験したことがあります。
年齢は2〜7歳で発症しやすいとされていますが、気付くまでに時間がかかることもあるので一概には言えません。
それに、もし病気じゃないことがわかった場合は、ストレスに対処するためのトレーニングが重要だということもわかりました。ありがとうございました!
【参考文献】
1、福士審「脳腸相関とストレス」ストレス科学研究,2013年(最終閲覧:2020年4月23日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/stresskagakukenkyu/28/0/28_16/_pdf/-char/ja
2、水越 美奈「災害時に起こりうる犬の不安に対する対応と予防」ペット栄養学会報,2017年(最終閲覧:2020年4月23日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/20/1/20_59/_pdf/-char/ja