子犬を飼う事になったらまず初めにやらなければいけない事の一つにトイレのしつけがあります。トイレのしつけは、最初の2週間を頑張れば一生快適に過ごせます。「大きくなったら出来るようになる」とトイレのしつけを先延ばしにし、失敗を繰り返すことをさせていると、あとでめちゃくちゃ大変なことになりますよ!
意外と多い、トイレのしつけの失敗例
私は長く訪問訓練士をしていましたので、犬を飼っている色々なご家庭にお邪魔してきました。
その中で驚いたことの一つに「トイレスペースが異常に広い」というのがあります。部屋の半分にシーツを敷き詰めているようなご家庭、意外と珍しくないんです。子犬じゃなくて、成犬でもです。し、しつけ・・どうしちゃった??てな具合。
そして・・・・部屋中がクサい・・・。スペースが広いから、やはりニオイが広がる範囲も大きくなってしまうんですよね。それでもあまり悩まれていないようで、お客様の方からは話題にされない事が多く、こちらから「トイレ、本当にこれでいいんですか??」と聞くような事が何度もありました。
飼い主さんにお話を伺うと、最初からそのようなトイレにするつもりではなかったが、子犬が粗相をする場所にシーツを敷いていったらこうなった、もう諦めた。と仰る方がほとんどでした。最初の2週間だけ頑張ればよかったのに・・・。勿体ないですね。
上記のような失敗例は「最終目標」がないままに、対症療法的に子犬の尻ぬぐいを繰り返した結果としか言えません。犬のしつけ全般にわたって言える事ですが、犬の出方を見てから対応をするのではなく、自ら簡潔でわかりやすい方向性を示し、それに犬を従わせる形にしていきましょう。
前準備:将来どのような排泄習慣にしたいかを考える
それでは、子犬のトイレ、将来どういう排泄習慣にさせてゆきたいかプランを立ててみてください。
〇 屋内の場合、トイレはどこに置くか?
〇 トイレの大きさは?
〇 トイレシーツを使う?新聞紙?別の製品?
〇 トイレは常時出しておく?させたいときだけ出す?
〇 屋外の場合、どの辺にさせるか?(庭の一角?散歩中?)
子犬が成犬になった時の理想の排泄習慣を描くことが出来たら、それに向かってトイレのしつけを進めてゆきます。
下に、7ステップに分けてトイレのしつけの仕方を紹介しています。ちなみに、「室内のトイレシーツで排せつ、トイレは常設」という設定でのしつけ方を書いています。
ステップ1:室内の1か所に囲い付きのトイレを作る。
室内の、最もアクセスのよい場所にトイレを作ります。トイレと同じ大きさで囲いを作りますが屋根はつけません。飼い主さんが上からアクセスできるような仕様が理想的です。トイレのしつけが出来るまでの短期間しか使わないものですので、100円ショップのメッシュラックや段ボールなどを利用して手作りしてもOKです。大型犬の子犬などには破壊されそうですが・・・。
トイレとベッドを一緒に入れるタイプのケージをお持ちの方が多いと思いますが、こういったタイプのものの全面をトイレとして使っても構いません。
子犬や小型犬用のケージは、トイレとベッドが同じケージ内のに置かれているものが主流です。これは、初期のトイレのしつけには適しませんので使わないでください。トイレはトイレで専用のスペースを確保してください。
ステップ2:子犬の普段の生活はクレートで
普段はバリケンタイプのクレートで過ごさせます。(写真参照)あなぐらに入っているような感覚で過ごせるスペースが理想出来ですので、ギリギリ立てる位の広すぎないものを準備してください。
子犬の成長に合わせて大きなものを既に買ってしまっているのであれば、余分なスペースには毛布などをギュウギュウに詰めてしまいましょう。クレートは、犬の移動や寝床に便利ですし、災害時に飼い主さんと一緒に過ごすための場所にもなります。一つあって損はありませんので、ぜひ購入してください。
子犬に限らず、犬は狭くて暗いスペースが落ち着きます。そこを安心して過ごせる寝床とし、出来るだけ汚さないようにする本能が備わっていますので、その本能を利用して「ガマンする」ことを学ばせてゆきます。
子犬にはのびのび過ごしてほしいからなるべく広く。刺激がないとつまらないだろうから、外が見えるように。そんな風に考えていたら子犬は落ち着きません。先ほども書きましたが、子犬が落ち着く場所は開放的な空間ではなく「暗くて狭い場所」です。外から自分が見えない場所です。以前、手作りの犬小屋に大きな窓を作られているのを見たことがありますが、子犬は「見える」「見られている」状態では落ち着きません。飼い主さんが見えるから遊んでほしくてピョンピョンとんで吠えたり、窓から見える外の通行人が気になったり・・・。遊ぶ時間、静かにする時間のメリハリをつけて過ごす為にも、寝床は暗くて狭い場所を確保してください。
ステップ3:クレートから出したら子犬をトイレへ連れていく
初めてのトイレに連れてゆきましょう。当然の話ですが、ほうっておいても自分からトイレには行きません。まずは、トイレ専用ケージに犬を入れ、ドアを閉めてください。ここからは、犬がどんなに泣いても無視をしつつ、オシッコが出るタイミングを待ちます。 最初はトイレの場所を認識していませんので、時間が掛かることを覚悟してください!!。
平均的に2~3時間はかかると思います。ガマンをする犬の場合には5時間、6時間待つこともあります。この間、絶対に犬から目を離さないでください!!
オシッコが出たら、その瞬間に褒めてトイレケージから出してあげるのですが、もし「ちょっと目を離した隙に」犬がオシッコをしてしまっていたら、それまで待った数時間が水の泡です。オシッコが出た後、数秒でも経ってしまうと、犬はなぜ褒められたのかが分かりません。
この最初のオシッコの瞬間をきちんと捉えることが出来たら、次のオシッコは格段に早くなります。こうしてオシッコが出たタイミングを逃さずに誉めることができると、数日で「トイレケージに入ったらすぐに」オシッコをするようになります。
タイミングを捉えることが出来、トイレケージから出してあげることが出来たら、子犬を沢山ほめて、ステップ4に進んでください。
*このとき、トイレの号令(「トイレ、トイレ」「ワンツー、ワンツーなど)を掛けてしまいたくなりますが、それはまだガマンしてください。号令をかけるのは、行動が定着してからです。しつけの基本!
ステップ4:おしっこが出たら、飼い主さんと子犬が触れ合う時間を作る
おしっこがジャーっと出たら子犬を褒めてトイレの囲いから外へだしてやり、15~30分ほど室内で過ごさせます。子犬にオヤツをあげても構いません。遊び好きの子犬だったらおもちゃを使って遊んであげると良いでしょう。遊び好きではない子犬はおひざに乗せて飼い主さんとのゆっくりとした時間を楽しむ時間にするのもOK。
このときの注意点は、飼い主さんが子犬から目を離さない事です。忙しい場合には5分でもよいので、子犬を放っておく事はせず、子犬とふれあう濃密な時間を過ごしてください。
ステップ5:クレートに戻す
決められた時間子犬と遊んだら、子犬をクレートに戻してください。クレートで過ごす時間の目安は、子犬がおしっこをガマンできる時間です。通常は月齢+1時間と言われていますので、それを目安にしてみてください。
子犬がオシッコを我慢できる時間の一歩手前でステップ3に戻り、トイレケージに入るとすぐにオシッコをするようになってきたら、ステップ3の代わりにステップ6に進んでください。
ステップ6:「おしっこ」の号令をかける
順調におしっこが出るようになって来たら、子犬がおしっこをしている最中に号令をかけます。「ワンツーワンツー」や「トイレ、トイレ」などが一般的ですが、これは別に何でも構いません。普通の会話に紛れてしまわないような、リズム感のある言葉が分かりやすいと思います。
おしっこが出たごほうびとして子犬にオヤツをあげても構いませんが、おしっこが終わってからにすること。 「オヤツゥ!イエーイ!」と興奮しておしっこが引っ込んでしまったり、号令を聞いていなかったりしてしまいますからね!
ステップ7:号令でトイレに入るように教える
ここまで来たらトイレのしつけも最終段階です。Step6でおっしっこをする行為と号令が子犬の中で繋がってきたら、今度は子犬をクレートからトイレへ直接移動させず、まず室内でフリーにしてください。但し、すぐに尿意をもよおしますので、号令を掛けながら子犬をトイレへ誘導してください。この時、抱き上げることはせず、子犬が自分の足でトイレに入るように誘導してください。リードを使うと便利ですが、リードは犬が明後日の方向へ走っていってしまわないための予防策であり、リードで引きずって連れてゆくのではありません。犬が自分の意志をもってトイレへ歩いてゆけるよう、上手に誘導してあげてください。
ステップ7までが完成したら、あとは子犬がクレートの外で過ごす時間を徐々に長くしてゆき、完全フリーの状態に段々と近づけていけば、トイレのしつけは完了です! 号令でおしっこが出来るようになりますので、外出先でもシーツを出してやり、号令で促すようにすれば、TPOをわきまえて、適切な時にトイレを済ませる事が出来るようになりますよ!家の中でも問題なし、お出かけしても周りに迷惑をかけない、「トイレのしつけ完璧犬」の誕生です。
子犬が家にやってきたその日から、毎日頑固に2週間。これを続けるだけで一生、犬のトイレには悩まされることはありません。こんな楽なことって無いですよ!
ステップ7-1:補足ステップ(トイレのやり直ししつけをしている場合)
上記の解説は、自宅に犬を連れてきてすぐにトイレのしつけを開始した場合について書いています。すでに何度も失敗を繰り返してしまっている場合には、ステップ6までは上記の方法で教えますが、ステップ7を達成するまで時間が掛かりますので、補足ステップが必要になります。
なぜステップ7がうまく行かないかというと、失敗を繰り返した経験(=排泄はどこでもOK!)を取り消すことはできない為、「排泄はトイレでする」という認識が育っても、同時に「トイレ以外ではしてはいけない」部分を理解できていない状態なんですね。
ステップ6までは順調に進んでも、ステップ7の段階に来ると「自主的にトイレに戻らない」という状態が続くようでしたら、以下の2つの補足ステップを加えてください。
①クレートから出した際に、離れた場所からおやつを使って「トイレの号令を掛けながら」トイレケージまで誘導する。
②トイレに入ったら扉を閉めずに、トイレの号令を掛け、「オシッコが出たら」おやつをあげる。(もしトイレケージから出て行ってしまうようであれば、再度おやつで誘い、トイレケージに戻してください)
上記の補足ステップは、犬のオシッコの頻度に合わせて頻繁に行うようにしてください。ステップ6までがしっかりと出来ていれば、例えオシッコが膀胱にたまっていなくても、数滴を絞り出すように排泄をするはずですので、「したくなるタイミング」を待つ必要はありません。
◆◆Q&A◆◆
夜間はどうするの?
夜間も、昼間と同じように対応します。但し、ステップ4だけは、飼い主さんとの時間を過ごすのはナシでOKです。その代わり、おしっこができたらオヤツなどを使って褒めてあげてください。なるべく興奮させないように、飼い主さんのテンションもトーンダウンしてください。夜中にも起きて遊んでくれると勘違いされても困りますからね!
クレートの中でおしっこをしてしまう場合はどうする?
本来なら寝床を汚したくないという本能が備わっているはずの犬。トイレのしつけにはその本能を上手に利用していくのが基本ですが、生まれた環境やこれまでの過ごし方で、汚れた場所で寝る事に抵抗がなくなってしまっているケースがあります。
そのような場合には、クレートの中でも構わず排泄をしてまいます。バリケンからおしっこ・ウンコまみれで出て来てはしつけどころではなくなります。そんな時は、バリケンから出す間隔を短縮してください。「尿意をもよおす前に出しておしっこをさせる」イメージです。
子犬をクレートに入れると吠える場合には?
頑固に無視してください。無視の三大原則「見ない・話しかけない・触らない」です。子犬をのぞき込んだり、静かにしなさい!と言ったり、ナデナデしたりしたらダメですよ。そのうち諦めて吠えやんだら、トイレのしつけを再開してください。
目を離したすきに、子犬が室内で粗相してしまうのだけれど?
これは絶対にNGです。「目を離した隙に」というシチュエーションを作ってしまっている事自体が間違いです。子犬のトイレのしつけでは、「失敗をさせないこと」が最重要です。おしっこのあと、子犬をフリーの状態で室内に出ている時には、必ず100%目が届く範囲内で行動させてください。「ほんのちょっとだけ目を離したすきに・・・」なんて言い訳は通用しません。クレートから出ている時間は絶対に放っておかない事。積極的に子犬と遊ぶ、子犬を撫でるなどして、必ず「子犬と触れ合っている」状態を確保してください。(最終更新 2023年12月20日)